岡山市が「ユネスコ/日本ESD賞」を授賞した〈もう一つの理由〉

毎年、3ヵ国の団体に授与される「ユネスコ/日本ESD賞」。

第2回目の授賞団体は、カメルーンのCBO(地域に根ざした組織)と
イギリスの高等教育支援組織と日本の地方自治体であった。

日本からの授賞団体は岡山市(岡山ESD推進協議会)。
とてもおめでたいことであり、後述のとおり、その理由も素晴らしい。

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しかし、同市の授賞以来、どことなく、公式文書に書かれている理由以外に、
別の理由があるのではないか、という想いが頭の片隅から離れなかった。
岡山市が「ユネスコ/日本ESD賞」を授賞した本当の意義とは、何だろう・・・。

ちなみに、ユネスコは「市をあげてESDを推進(whole city approach)」したから、
と理由を伝えている。ぼくもメンバーの一人であるESD賞国際審査委員会でも、
そうした評価だった。

国際賞というと、貧困からの脱却とか、災害からの回復とか、現実を変えたような
センセーショナルな功績が讃えられることが少なくない。

でも岡山には、目立った貧困も自然災害も皆無に等しい。
そうした街がなぜ授賞したのかは、一見、分かりづらい。
その意味で、岡山市は選考過程において不利な立場にあった
という見方もあながち誤りではない。

今月、岡山市ESDフォーラムの基調講演者として呼ばれ、
高校生から公民館関係者まで、当地のESD関係者の方々との
交流を重ねて、もう一つの授賞理由はやはりあったのだ、と確信するに至った。

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ひと言でいえば、この授賞は、普通の人々による普通の人々のための不断の努力への賛辞である。日常を大切にする人々の日々の努力の積み重ねが評価されたのだ。

その意味で、日常生活の営みの基層に持続可能な未来への価値観やスピリットを染み込ませようとしてきた市民と行政の持続的な努力に対する授賞は、世界の9割の人々に向けられた特別なメッセージなのである。とりわけグローバリゼーションと言われる世知辛い時代において、そうした努力は国境を越えて大切な学びとは何かを諭してくれるに違いない。

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5人の異なる大陸から選ばれた委員から成る国際審査委員会では、自国の申請については原則、コメントを避けるという暗黙の了解がある。他の委員と同様に、ぼくも、審議中は、国際審査で日本の申請内容についてはノーコメントを貫いていた。

ただし、何か質問をされた時は回答してもよいという、もう一つの暗黙の了解があり、昨年のユネスコ本部での審査時に、岡山について、どんな持続不可能な問題があるのかと、ある委員から質問されたことがあった。その時、次のような返答をしたのを覚えている。

「確かに世界的に見れば、岡山は持続不可能性と〈闘う〉都市ではないでしょう。でも、そこには放っておいたら大きくなってしまうかもしれない〈小さな持続不可能性〉が普通にあり、その一つひとつを市民が行政と手をたずさえて達成感や幸福感に変えていっている。日常の幸せのためのシームレスな努力がコツコツと重ねられている街なのかもしれません。」

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教育の仕事に携わる妙味は、こうした日常の営みに寄り沿えることなのかもしれない。この授賞は、賞を授ける側の方が学ばせていただいたような気がする。世界中の人がぜひとも岡山を訪れ、普通の人々による普通の人々のための普通の学びの真価を実感してもらいたいと思う。持続可能性や平和とは、こうした不断の営みの延長線上にしか実現できないはずであろうから。

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岡山の皆さん、あらためて心よりお祝い申し上げます!

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未来形ESD ー アシュレイ校の挑戦 ー

英国サリー州に「ハーモニー」という標語のもとに、持続可能な未来につながる教育実践で注目されているアシュレイ小学校(Ashley Primary School)があります。

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傍から校舎を見ると、イギリスの普通の公立学校ですが、この内で起こっていることは革命的とも言える教育です。実際に「持続可能性(サスティナビリティ)革命」と呼ばれていて、カリキュラムのみならずエネルギーや食など、学校生活のあらゆる側面において持続可能性が見出せる「ESD(持続可能な開発のための教育)実践校」です。

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校長先生は、リチャード・デューンさん。

全校生徒にコンパスを提供し、三度の飯よりもコンパスの好きな校長さんです。(なぜコンパスか、は後述)

「革命」が始まって間もなく、学校はみるみるうちに変容しました。その変容ぶりは、よく言われる学校改善や授業改善とは対極とも言える「変容」なのかもしれません。一時の学力向上とかではなく、先生も生徒もハッピーになり、生涯、自ら学びを楽しんでいけるような基盤づくりが行われるようになったのです。

2016年2月には、チャールズ皇太子が同校を訪れ、皇太子ご自身が提唱する「ハーモニー原則」が唯一、現実のものとされている学校であると賞讃されるまでになりました。

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(写真提供:Ashley Primary School)

2015年には環境問題に取り組む優良実践校として英国で「エコ・スクール代表校」に選出され、2016年度には英国を代表して「ユネスコ・日本ESD賞」の審査対象校に選ばれています。

同校で15年間、校長先生を務めるリチャード校長がユネスコ・アジア文化センターの招へいでこの11月に来日し、同月20日には日本国際理解教育学会及び聖心女子大学大学院の共催で参加型セミナーが開かれました。

当日は、まさにリチャード校長が唱える「サスティナビリティ革命」が起きたと言えます。多くの参加者に深い次元で変容をもたらしたような時間でした。セミナーが終了した翌朝、参加した方々から「いろいろ揺さぶられ、たくさん刺激をもらいました」や「公立校の制度は日英で異なるけれど、知恵と勇気をもらった」「公立でももっとやれることがある」「沈黙の時間など、直ぐにでも実践したい」「自分の深いところに届いたメッセージだった」等々、という丁寧な感想メールをいただきました。

その一端ではありますが、ここに当日のセミナーの概要をお伝えします。セミナーのタイトルは「持続可能性を学びの真ん中に置こう(Putting Sustainability at the Heart of Learning)」です。

1. Introduction – Minute of Silence 沈黙の時間
アシュレイ校は特定の宗教を教えてはいないのですが、子ども達の精神性や心の安定をとても大切にしています。そうした姿勢の現れが、授業の前の「沈黙の時」です。子ども達は、ほんの数分の「沈黙の時」を経ることで休み時間の慌ただしさから集中が求められる学習の時間へと移っていきます。実際に、今回のセミナーでも体験してみました。

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* 以下、セミナー当日に使用されたパワーポイントの一部をリチャード校長の了解のもとに借用し、レクチャーの概要をかい摘んでお伝えします。

2. Richard’s Journey So Far リチャード先生のこれまでの「旅」
リチャード校長の教育観というか、人生を変えたのは2度にわたる南極旅行でした。南極に行き、ペンギンなどの生態系の変化や溶けていく氷山を目の当たりにして、自分の足下、つまり学校から変えていこうという決意に至ったのです。以来、エネルギーや食の大切さを教室内で教えるのみならず、学校の在り方そのものを持続可能にしていく方向に舵を切っていきます。

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3. The State of the World 危機に瀕する世界の現状
私たちの世界は徐々に危機に瀕しています。温暖化や生物多様性の喪失など、経済成長の成れの果てに地球は徐々に蝕まれているような状態にあるのです。気候変動はその最たる現れである、とリチャード校長は捉えています。

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4. A Values Culture 価値の文化
そんな中、教育でもっとも大切なのは、持続可能な未来へとつながる価値観を養うこと。アシュレイ校では「自由」や「希望」「公正さ」「簡素」「信頼」「責任」など、沢山の価値観を大切にしています。ところが、これらの教え方は伝統的な道徳教育とは全く異なる方法によります。つまり、7つのハーモニー原則をカリキュラム全体に織り込む(染み込ませる)ことによって子ども達の道徳(倫理)観を育んでいるのです。

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5. Nature’s Principles of Harmony 自然界のハーモニーの原則
アシュレイ校の子ども達は以下に述べる「7つの原則」をじっくりと学んでいきます。ここで強調されるべきは、持続可能な未来にとって大事な諸原則はいずれも自然界に見出せるということです。これから示す7原則は自然界や宇宙の摂理であるとも言えるでしょう。

6. The Principle of the Cycle 循環の原則
世の中は循環(サイクル・サークル)に満ちています。食や水、季節、我々の血液はどれも巡り巡っていますし、チョウもカエルもサケも、皆、循環の中で生きています。

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教育で大切なのは、こうした循環を教室で知識体系として覚えることというよりも、学校生活全体の中で生徒たちに五感で感じ取らせることだと、リチャード校長は言います。したがって、アシュレイ校では、食の循環、つまり、子ども達は校内の有機野菜畑で採れたものを食べ、残った食べ物は堆肥にし、再び野菜を育てています。

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7. The Principle of Interdependence 相互依存の原則
アシュレイ校で相互依存を学ぶ一例は養蜂の実践です。ハチについて、ハチと共に、子ども達はハチと植物(受粉)、ハチ同士、ハチと人間が共存していることを学んでいます。

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実際に、子どもは特別な服を身につけ、実際に蜂の巣を作る手伝いをし、蜂蜜を採取します。

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8. The Principle of Geometry 幾何学の原則
アシュレイ校ではコンパスを生徒全員に提供し、幾何学に親しませます。

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私たちの内と外に、壮大な天体から微生物に至るまで幾何学のパターンが見出せます。こうした「不思議」と出会う子ども達の想像力は尽きず、小さな水滴に地球を見、台風の渦と巻貝の形を重ね、天体の軌道と花の形状に相似性を見出します。

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実際に生徒たちにコンパスで2つの円から6つの円を描かせ、その中に見出せるパターン(模様)を自然界で見られるパターンと重ねていきます。一例ですが、二つの円が重なると魚の形が現れます。これはベシカ・パイシスと呼ばれる生命が生まれる形として知られ、自然界にも容易に見出すことができます。

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また、6つの円の真ん中に1つの円を置けば、6角形ができますが、これは花びらが作る形状と重なります。アシュレイ校の生徒たちは、コンパスを用いて創る形状と自然界のパターンとを重ね合わせ、センス・オブ・ワンダーを獲得していくのです。

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9. The Principle of Diversity 多様性の原則
アシュレイ校では、種から野菜、花に至るまで校内で育てるものの多くは多様な種から成ります。つまり、世の中は多様であることが自然であり、その方がしなやかで強いということを学びます。

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10. The Principle of Adaptation 適応の原則
現在の教育の問題点は、教科書に代表される標準(スタンダード)を重んじるがゆえに、子ども達の実際の生活から掛け離れたことをしばしば教えてしまうことです。アシュレイ校では、これを回避するべく、地域のホンモノと子ども達を積極的に出会わせます。例えば、有機農法の専門家や伝統的な技能をもった職員などに直接、子ども達と接してもらうのです。

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11. The Principle of Health 健康の原則
アシュレイの子ども達は皆、健康的で、元気一杯です。ランチには校内菜園で採れたての野菜を食べ、手づくりの料理で元気になります。子ども達に「健康な状態」とは? と尋ねると、「よき食べ物」や「奇麗な水」「適度な運動」「奇麗な空気」などのような身体に係わる答えだけでなく、「自分が価値づけられているとき」や「新しいことを学んでいるとき」「信じているもののために立ち上がっているとき」「他の人をケアしているとき」「何かを創造・想像しているとき」「自然とつながっているとき」など、心や精神に係わる答えもあげられます。これらは、実際にアシュレイ校で子ども達が実感しているから生まれる回答であると言えましょう。

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12. The Principle of Oneness ひとつながりの原則
最後に、以上の原則をひとつらなりにする原則、つまり「ひとつながりの原則」があります。これは、個人どうしが一体感をもって共生するのに不可欠な感覚です。ですから、このセミナーでも実際に体験したように「沈黙の時」を授業などのイベントの始めと終わりに行います。

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13. Sustainability and Leadership 持続可能性とリーダーシップ
アシュレイ校では、これらの原則を学びながら、全ての子どもがよきリーダーとして育まれていきます。そのリーダーシップの種類は実に多様です。

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例えば、
・エネルギーをモニターするリーダー
・残食を計量するリーダー
・水の利用に関するリーダー
・生物多様性プロジェクトのリーダー
・野菜等の生育・水やり・雑草抜きのリーダー
・校内リサイクルのリーダー
・遊びの時間とインクルージョン(包摂)に関するリーダー
・クリーンな旅行のためのリーダー

これらは日本だと「係」に相当しますが、いずれも地球規模課題が意識され、子ども達は地球の「守り手」「救い手」としての自覚をもっているところが決定的に違うのかもしれません。

14. Harmony Song – Belle Mama ハーモニー・ソング

「ひとつながり」をセミナー参加者みずから体験するように、ワークショップの最後に皆で、「偉大なる母」という歌を歌いました。

15. Conclusion – Minute of Silence 沈黙の時間

そして、最後はふたたび「沈黙の時間」を全員で共有します。

以上の内容を半日(4時間)でこなしたので、相当に濃い時間となりました。

さらなるアシュレイ校の実践や理論については、以下の同校のホームページ(英文)をご覧下さい:

アシュレイ校ホームページ(英文)

SDGsスタディツアー報告【速報版】

スリランカ中部のペラデニヤ市の街外れに小さな公立学校「ウダ・ペラデニヤ・スクール」があります。

かつては800人ほど生徒が通っていた学校ですが、村が少しずつ豊かになるにつれ、村人は街の学校(タウン・スクール)に子どもを通わせるようになり、近年は生徒が激減しています。

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生徒数は2000年代以後、徐々に減り続け、現在はシンハラ人とタミール人の貧困家庭の子どもら22人が通っています。スリランカは5歳時入学で、小学校が5年間、中学校が4年間、高校は2年間。ウダ・ペラデニヤ・スクールも1学年〜11学年までの、いわば一貫校ですが、少人数ゆえ3人前後の授業が大半です。

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この9月に学生10人と聖心女子大学の教員2人とで、さまざまな持続不可能性に直面する学校をなんとかサスティナブルな方向にシフトできないか、という構想のもとにスタディツアーを実施しました。心強いパートナーは、地元のペラデニヤ大学の大学院生(現職教員)の皆さん。

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学校訪問時にはスリランカの民族衣装であるサリーを必ず来てきます。スリランカの大学院で1年半、修士論文を執筆していますが、現職の小学校教諭でもあります。

大学院生らと決めたテーマは、日常の持続可能性。ゴミ問題をはじめとする環境汚染や食の安全などを題材に、未来の持続可能性と現在の持続不可能性を結びつけて、足下の日常生活を捉え直そうという試みです。

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ヒントにしたのは、昨年、国連で決議されたSDGs(持続可能な開発のための目標)。

SDGs(サスティナブル開発目標)

SDGsが掲げる17の目標を参考に、ゴミ(Waste management)、食(Sustainable Food)教育(Education for Sustainable Development)等にフォーカスを当てて、10人の学生たちが2ヵ月間かけて練った自主企画によって持続不可能性に挑みました。

年内に刊行予定の報告書にて詳細をお伝えしますが、ここでは「速報」としてゴミ問題に関する活動を紹介します。

スリランカの村を歩くとゴミが目に入ってきます。
目立つのはビニール類。道端や川岸に平気で捨てられています。

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それを日本から持っていったトングで子ども達と拾い、集めてみました。

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瞬く間に集まったゴミを学校に持ち帰り、先生の意見に基づき、①紙等の可燃物、②プラスチック・ビニール類、③堆肥になるオーガニック、という3つに種別します。

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いちばん多いのはプラスチックやビニール類。
なぜなのか・・・ 現代の生活についてクイズ形式で子ども達と考えてみました。

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それから、地元で買ったゴミ箱に、ゴミの種別ごとにカラフルな色づけを子ども達がしていきます。

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できました!

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チームごとに記念撮影。
子ども達は誇らしげです。

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同様に、食についても持続可能性という観点から見直し、安価とは言え身体によくない着色料等の使用しない伝統食にあえてこだわり、ホテルのキッチンとホールを借りて村人を招いたパーティを開きました。

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子ども達とはココナッツ等を使ったクッキーづくり。

以上のように、日常の持続(不)可能性という観点から学校生活全般の「あり方」を捉え直すために、楽しい劇や歌などを交えたワークショップをつづけました。が、ホテルに戻ると学生たちは、連日連夜、反省(猛省)会と打合せ、そして下準備に追われます。時には予期せぬしくじりから凹むことも・・・。

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たしかに細かな反省点は少なくないですが、すべて今後に活かせる修正点ばかり。全般的には、地元の方々やペラデニヤ大学大学院の皆さんにも高い評価をしていただき、現在は、いかにして今回の「はじめの一歩」を継続させていくかが課題となっています。

ここまで漕ぎ着けることができたのも、事前学習でお世話になった方々から度重なるご助言を受けることができたことと、ツアー初日にJICAコロンボ事務所で環境や教育等に関する丁寧な講義を受けることができたことが大きかったと言えます。充実した内容のお話をして下さった専門家の方々や現地のJICA職員の方々には感謝してもしきれません!

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さて、旅の最後の週末には、がんばった「ご褒美」として、世界遺産のシギリヤ・ロックまで足を伸ばし、夕日に皆で包まれました。

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この日、誕生日を迎えた学生には、岩上サプライズの ♪ハッピーバースデイ♫

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そして、サファリもおまけ。

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学生たちは、この上ない至福に浸っていたようです。

さて、今回は、学校での可能性をいろいろ試してみたものの、分厚い壁にも直面したツアーでもありました。人間が快適さや利便性を求めるがために、地球環境に過度な負荷をかけ、自らの健康を害するような社会の中に自分たちも身を置いているということに気づいた旅でもあったのです。

たとえば、ダイオキシンの問題・・・。

スリランカの村では、ゴミの回収もまだ普及しておらず、プラスチックは各家庭で燃やされ、発がん性のあるダイオキシンをはじめとした有毒煙が村の家庭を包むことは珍しくありません。あの屈託のない子ども達が通うウダ・ペラデニヤ・スクールも例外ではないのです。

学生たちの奮闘の旅はまだまだ続きます。

いざ、サスティナブル開発目標(SDGs)時代の学校づくりへ

昨年、国連総会で「サスティナブル開発目標(SDGs)」が採択されました。貧困や気候変動など、17にわたる分野で世界各地で問題解決に向けた様々な取り組みがスタートしています。

今学期に開講されている授業「発展途上国における教育問題」でも、SDGsに至るまでの歴史などを学んだ後に、同授業の一環としてスリランカを訪れ、SDGsを意識した学校づくり(学校改善プロジェクト)に着手します。

従来の学校改善プロジェクトでは、授業やカリキュラムの改善を通して学校をよくしよう、という試みが多かったように思われます。でも、SDGsの時代には、17の目標を意識して、学校まるごと、つまり授業だけでなく、校舎・校庭、食・飲料、交通、健康、カリキュラム、先生方の研修のあり方、生徒ー教師の関係性、労働条件、地域や海外との関係など、すべてにおいて持続可能性(サスティナビリティ)が求められます。

現在、現地での活動がスムーズにいくように、日本の企業や自治体による中間技術などにヒントを見出しつつ、現地の問題解決の可能性を探っているところです。

ここではまず、フィールドワークの舞台となるスリランカ中部のペラデニヤ郊外にあるウッダ・ペラデニヤ村のアナンダ公立小学校等のかかえている問題について紹介します。

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学校の入り口を入ると、小ぢんまりとした空間が広がっています。

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真っ白な制服に身を包んだ生徒たちはとても勉強熱心。

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教室はこんな感じ。壁のない空間で、間仕切りと間仕切りとの間が教室です。

アナンダ公立小学校は、かつては千人以上も生徒が集う賑やかな学校でした。しかし、村が少しずつ豊かになるにつれ、村人は「タウンスクール」と呼ばれる街中の学校に子どもを通わせるようになり、この数年で生徒数はどんどん減っています。現在の生徒数は40人。このまま減り続けると閉校になると言われています。

ここで村人が「いい学校」と言っている人気の「タウンスクール」はどんな様子かを見てみたいと思います。

アナンダ小学校から車で20分ほど行くとキャンディというスリランカ第2の都市があり、その郊外の典型的な学校はこんな感じです。

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教室はとても賑やか。

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ところ狭しの体育の授業。

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スリランカでは、どの学校でも掲げられている標語:5S(ファイブ・エス)」。「せいり・せいとん・せいそう・せいけつ・しつけ」が英語とシンハラ語で校内の至る所に描かれています。

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校内にはキャンティーンと呼ばれるお店があり、休み時間になると子ども達は駄菓子を買いに殺到します。

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でも、売られている駄菓子は着色料を沢山使ったものが大半です。

さて、アナンダ小学校に話を戻します。

ペラデニヤ大学(スリランカのエリート大学)の客員教授として研究をしていた昨年、大学院生の皆さんと一緒に調査チームをつくり、アナンダ小学校の課題を調べたことがあります。

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調査チームは、SDGsを意識した評価項目がかかれた紙を手に、さっそうと校内を見て、先生や生徒と話をし、課題をまとめました。

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すると、見えてきた課題は、

食料や水、ゴミ、エネルギー、カリキュラムなど、です。

子ども達が口にする食べ物は田舎で暮しているにも関わらず、化学肥料や着色料を含んでいて、決して健康的であるとは言えません。

水不足などの問題はあまりないのですが、トイレなど水回りの衛生管理が問題です。

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これは典型的な小学校の「ボットン便所」。

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上の写真は、学校の近隣を流れる小川。
水位が下がると、村の人々が沢山のゴミを捨てているのが分かります。

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これも近所のゴミ捨て場ですが、プラスチックでも何でも燃やします。
週末になると、学校の周辺の家々から煙が立ち込めることも珍しくなく、ダイオキシンなどによる健康被害が心配されます。

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カリキュラム関係では、先生の不足や上記のような実験器具の質の問題などがあります。

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そんな問題をまず伝えようと、調査チームでは、模造紙に問題を描き出し、校長先生に伝えてみました。

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退職まであと2年。教員人生最後の学校を持続可能にしたい、とウェーラシンハ校長先生は静かに語っておられました。

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調査チームが至った結論として、タウンスクールに比べて田舎の学校は不人気ですが、本当の「豊かさ」を具現化する可能性はむしろ田舎の学校の方にあるということ。田舎の学校への偏見を取り除くことはスリランカ中の重要課題なのかもしれません。

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上記の問題を解消するために、SDGsを用いた学校改善プロジェクトはスリランカの教育大臣であるアキラ氏(写真中央)も注目しています。学校をサスティナブルにすることを通して地域社会全体を持続可能にするという構想に向けた第1歩として、ぜひ学校改善プロジェクトを成功に導きたいと思っています。

 ※ 学生たちはハイテクではなく、日本の中小企業等のもつ中間技術に着目し、もっか調査を続けています。アイデアをお持ちの方、ぜひご教示ください!

スリランカのキャンパス・ライフ

「ペラデニヤは大学があることで知られる静かな町である。
 ペラデニヤ大学のキャンパスの緑にかこまれたすばらしさは
 アジア一ではないかといつも感じる。」

上は、文化人類学者の青木保(『逆光のオリエンタリズム』 岩波書店)の言葉ですが、昨夏より在外研究の一環としてペラデニヤ大学で研究生活を送って以来、この言葉に裏切られたことがない日々を過ごしています。

スリランカで最も由緒ある最高学府、ペラデニア大学は1942年に英国ケンブリッジ大学を意識して創られたと言われています。8学部、74学科、8図書館、17寮を擁し、13,500人弱の学部生、960人の大学院生、50人ほどの留学生が学ぶ総合大学。

キャンパスに入ると、まず気づくのが広大なキャンパスと由緒ある建物。

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1947エーカー(東京ドーム170程収まる広さ)の広大な敷地に散在する威厳のある建物だけでなく、学内には川が流れ、駅舎もあれば、劇場や学生寮、食堂、仏教・イスラム教・キリスト教・ヒンズー教の寺院なども散在しています。

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キャンパスの中には巨木がたくさん。大学の向かい側にはアジア最大級のペラデニア植物園があり、国内外から観光客が集まります。植物園の木々も目を見張るほどの巨木が多いのですが、大学も負けてません。

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でも威張っている木は1本もなく、幹のごとく太い枝が地上に降りたかと思えば、また空に向かって伸びています。ゾウの鼻のごとく下へ下へと降りてきた大枝には、大人が腰掛けたり、子どもが股がって遊んだりしています。週末には大きな枝の上で子ども達が思う存分に戯れています。キャンパスの木々はサルとリスの楽園でもあります。

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キャンパスを歩いていて、もう一つ気付くのはカップルの多さ。手をつないで歩く男女の姿は日常の光景。図書館も二人で勉強(?)しているカップルが目立つ。食堂でも一つのお皿を二人で一緒に食べている。この上なく仲睦まじいのに爽やかに映るのが不思議です。

ちなみにカレーはナンが付いて22円。シンプルで辛くて旨い!

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もう一つ、お気に入りのランチの場所は農学部が営む食堂「ヘラ・ボジュン(「スリランカの(伝統的)食事)という意味)」。スリランカの伝統的な食材のみで作った伝統料理を出してくれます。ランチをたら腹食べても80円から100円位。

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料理&販売の担当は、女性の自立経営プロジェクトの一環として地方の貧困村から6ヵ月間のトレーニングでやってきたおばちゃん達。茶目っ気たっぷり、めちゃくちゃ元気です。

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小麦は使わず、米粉や雑穀、薬草などによる伝統料理ばかりです。
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キャンパス随一の憩いの場はミルクバー。大学の農場や試験場から採れたての牛乳を使ったソフトクリーム、ホットミルク、ヨーグルトなどが人気。なぜかブツ切りポークも売られています。大人気の大学農場の採れたてミルクで作られたソフトクリームは30円。

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学内には、コープはもちろん、床屋まであります。
床屋は散髪が30分で90円。20分の上半身マッサージも90円です。

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大学は、授業料は無料。大半の授業は英語で行われています。日本の大学院に留学した経験のある教授が70余名もいるせいか、大の日本びいきの大学で、日本とスリランカの学術交流のイベントも毎年開催されています。

日本のキャンパスとの違いは色々あれど、キャンパスでSNSをやっている学生は皆無に等しいということが一番かもしれません。そのせいか、せわしなさが全く感じられないキャンパス。学生が歩く速度は日本の学生の半分くらいでしょう。

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せわしなさについては教員も同じで、皆、それなりに忙しいようですが、話し合いの時間は学生とも同僚ともきちんととっている。立ち話は長い。遅くまで大学に残っている教員はまず居ません。だいたい夕方4時半から5時には帰宅。

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ペラデニア大学は、研究組織としても南アジアではトップレベルで、先日はアストロ・バイオロジーの国際会議が開かれていました。昨秋だけでも国内外から数百人規模のコンフェレンスが2つも開催されています。基調講演者は、日本のナノテク研究でノーベル賞候補者としても知られる飯島澄夫先生でした。

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ちなみに、アメリカ航空宇宙局(NASA)にも人材を輩出している大学でもあります。
そんな人材は、こうした豊かな環境があるからこそ、はぐくまれているのでしょうか。

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グローバルな大学改革のトレンドからすれば、まったり度100%のペラデニア大学は、見方によっては高等教育改革の世界標準からは1周も2周も遅れているのかもしれません。けど、急いで進めば進むほど、大事な何かを失い、気付いたら、後戻りできない・・・そんな大学が増えている中、ペラデニヤ大学は「1週遅れのトップランナー」なのかもしれない・・・そんなことを、日々、感じています。
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